自民党の
世耕弘成参議院議員が2005年9月の
小泉首相の
郵政民営化解散総選挙の時にそれまで本格的に広報戦略が無かった自民党において、自ら
広報担当補佐官という立場で活動した内容が書かれている。
政治論や自民党、郵政民営化の是非については全く記述されておらず、広報戦略について記述内容が絞られている。
世耕議員は
NTTの広報室の出身であることもあり、実際の企業での広報戦略について知ることもできる。
まず、冒頭に広報とは「
プロジェクト・マネジメント」である。という記述からちょっと驚かされる。広報担当メンバーをまとめ、モチベーションを高めて最大限の効果出すためには、まさにプロジェクト・マネジメントということは読み進めていくと納得できる。
郵政民営化の是非にターゲットを絞ったあの選挙戦は、実は、相当に広報戦略が練られていたことが本書でわかる。目的である選挙で多くの当選を勝ち取るには何を広報すればよいかを日々考え、戦略を練って実践していた。
よく、あの選挙は郵政民営化以外の問題(
年金や地域格差等)について自民党はほとんど触れなかったのはおかしいと聞くが、それは、広報戦略により、そのようにしていたことを知った。他の問題を触れないことによって、当選者数が減るような兆候があれば、いつでも年金問題に関する広報をする用意は整っていた。しかし、郵政民営化の一点で戦うことが最善との判断(統計データを含めた)をしたためだった。あえて、民主党が主張している年金改革について同じ土俵で戦うより、国民にわかりやすい郵政民営化の是非で攻めることが最大効果を得ると判断したのである。改めてこのことを知ると広報とはすごいなぁと思う。その他の広報活動についても、事細かに書かれている。それぞれ効果があり、なるほどと思わせる内容がいっぱいである。
また、最後の章「おわりに−改革の同志たちへ贈る言葉」において、
ゴルバチョフ理論についても考えさせられる。現状に疑問を持っても、改革はすぐにはできない。結局、駄目だとあきらめて現状に不満を持ったまま腐っていくパターンが多いが、地道に日々努めていくと自分のポジションとタイミングの組み合わせで必ず改革の潮目がくるので、そのときに実行できるとのこと。著者も自民党で数々の広報改革を訴えてきたがなかなか受け入れてくれなかった。それが、郵政民営化問題で一挙に実行できるようになった。現状にふて腐れていると、そのときに「使える人」としては登場するのは難しいところなので、それまでは多少の我慢も必要であろう。
あと、真藤NTT社長時代に公益企業と言われるのをとても嫌っていたとのエピソードはおもしろい。「ガス・電気・鉄道等の公益企業で値下げを一生懸命しているところはない。簡単に値上げをする。
公益企業ほど非公益企業はない。自動車メーカーや家電メーカーは自ら公益企業と言わないが、庶民が手の届かなかった製品をなるべく安く、品質がいいものを提供している。それでみんなが喜ぶ。これこそ公益ではないか。」・・・
まさにその通りと共感する。
真藤さんはすごい。
ただ、前回の参院選の広報活動、安部総理になってからの閣僚の失言等々、素人目にもよい広報とは言えないと思う。広報戦略を根付かせるにはプロジェクト・マネジメント的にいうと標準化が必要なんでしょうね。
posted by kuny at 02:51| 東京 ☀|
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